2021年1月24日 主日礼拝 何も持って行ってはならない

聖書:ルカによる福音書 9章1-6節

ルカによる福音書には、9章に十二人の派遣が、また10章には七十二人の派遣が記されています。最初の派遣がイスラエル十二部族全てに対して、七十二人こそが全民族への派遣であると言われています。そのようにして主イエスは、ご自身が神より預かった悪霊を追い出し、病気を癒す力と権能を、弟子たちに授けていかれるのです。その目的は主イエスがこの世に遣わされることで始まった「神の国」の実現へ、一人ひとりが参与していくことでした。現代社会に生きる教会もまた、この働きに招き集められた人々によって構成され、遣わされていると言えるでしょう。

主イエスは彼らを遣わすにあたり「旅には何も持って行ってはならない。」と語りだすのでした。さらに具体的に「杖も、袋も、パンも、金も持ってはならない。」と、言われるのでした。従って彼らは今まで持ったこともない力と権能が授けられ、一方で旅には誰でも準備する品を一つも持っていくなと言われたのでした。何も持たないことに対しての危機管理とリスク対応が頭をよぎりますが、そこに支えを感じている間は、決して宣教も癒しも実現しなかったのではないでしょうか。

主から与えられた「力と権能」であっても、いつでも発揮できるものではなく、出会いによって、そこに深く憐れむ思いと祈りが引き起こしていくものでした。だからこそ、受け入れてくれる家に入って、とどまって神の言葉を語り世話になり、受け入れない者がいた場合の方法まで丁寧に示していかれるのでした。

主イエスの教えを直接受け、どんなにすばらしい福音が語られても、それを受け入れようとしない人々がいたことを知ります。 そして、その働きは一瞬のうちに広く及ぶことでも、魔法のように人々の気持ちが変えられていくことでもないことに気付くのです。ましてコロナ危機の中で、現代社会における教会の業は、ますます困難な時代へと突入していくことでしょう。しかし、見えるものではない「力と権能」が確実に教会に授けられていることを受け止めていきたいと思うのです。