ヨハネによる福音書14章25-31節
ヨハネによる福音書14章~16章は、主イエスが弟子たちに語った告別説教であると言われています。そこには、残していく弟子たちの信仰を案じて丁寧に大切な言葉を一つひとつつなげて語る主イエスがいるのです。その中で本日の聖書箇所は、特に「キリストの平和」について記されています。
まず、聖霊が私たちに与えられることが語られます。聖霊は、主イエスが父なる神に願って遣わされた存在であり、主イエスを信じる者と永遠に共にいてくださいます。この方は、真理の霊(聖霊)であり、すべてのことを教え、主イエスの言葉を思い起こすことができるようにしてくださるのです。
次に「キリストの平和」について語られます。当時の「平和」という考え方は、強く権力を持った人間や組織が、この世を治めていくことで「平和」が実現するとしていました。ですから当時のローマ帝国の皇帝は「平和を造る人」と崇められ、神の子とされていたのでした。しかし、主イエスが語る「キリストの平和」は決してこの世から与えられることはなく、主イエスご自身が「私の平和」として与えてくださるものです。
本日の召天者記念礼拝は、この教会に関わり主イエスに従い歩まれ、先に召された方々を思い起こし、その信仰生活を喜ぶ礼拝です。主イエスは「敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい(マタイ5:44)」と言われました。ヨハネによる福音書が記された時代、キリスト者たちは最も厳しい迫害にあい、命の危険にさらされていました。しかし、そんな中でもヨハネの共同体は、「キリストの平和」が神のご計画の中で進んでいることを信じて記していったのでした。
現代社会に生きる私たちは、各地で行われる戦争や暴力の報告に無力感を感じるのかもしれません。しかしヨハネの共同体が「キリストの平和」を信じたように、「心を騒がせるな。おびえるな。」と語ってくださる方が今も生きて働かれていることに希望を持って歩みたいと願うのです。